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高森明勅
2021.3.10 06:00皇室

皇室経済法と「女性宮家」

高森稽古照今塾の受講生からこんな質問があった。

「皇室経済法は、少なくとも“一代限り”の女性宮家については、
既に認めているんですか?」と。

同法第6条第3項第3号には「独立の生計を営む内親王」に
支出される皇族費の金額が定めてある。
「女王」についても、同項第5号に規定がある。
これらによって、同法が内親王・女王が「独立の生計を営む」可能性を
認めていることが分かる。
ご独身であっても、宮号(みやごう)を賜って、独立の生計を営まれた
桂宮(かつらのみや)の例がある(昭和63年1月1日より)。
三笠宮家のご次男だった宜仁(よしひと)親王のケースだ。

ちなみに、同宮家のご長男だった寛仁(ともひと)親王の場合は、
ご結婚により独立の生計を営むことになられたが、
やがて三笠宮家のご当主になられるはずだったので、
宮号を賜らなかったものの、宮家に準じた扱いを受けておられた
(結局、ご当主になられる前に亡くなられたが)。

ちなみに三笠宮家の現在のご当主は、
崇仁(たかひと)親王妃百合子(ゆりこ)殿下。
将来、もし内親王・女王がご独身のまま、独立の生計を
営まれることになった場合、それを事実上の“宮家”と見ても
特に支障はあるまい(宮号を賜れば文字通り宮家)。
ご独身なら当然、一代限り。
そのような意味では、皇室経済法は既に“一代限りの女性宮家”を
認めているとも言える。

しかし、これまで皇位の安定継承との関わりで議論されて来た
「女性宮家」は、そのようなものではない。
未婚の女性皇族(主に内親王)が、“ご結婚後”も皇籍にお留まりになり、
ご自身を当主とする宮家を設けることを意味する。
「一代限り」の場合は、その宮家のお子様が男女いずれであっても、
又何人おられても、宮家を継承したり、新たに創設したり出来ない
(かなり不自然な)制度を指す。

勿論(もちろん)そのような制度では、皇位の安定継承や
皇族数の減少には、何ら寄与し得ないことは言う迄もない。
いずれにせよ、内親王などがご結婚後も皇室に残り得る女性宮家を
創設する為には、やはり皇室典範第12条・第15条の改正が不可欠だ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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